松坂屋名古屋店美術画廊で最大の催し、「近代日本画巨匠展」の季節がやってまいりました
今年でなんと37回目。
松坂屋創業400周年である、記念すべき今年の特集企画は・・・「横山大観特集」です


美術にあまり詳しくない方でも、この名前だけは知っている!というほど、日本美術史の巨星として不滅の光芒を放つ人物、それが横山大観です。
大観が心で描いた珠玉の作品の数々。
ブログ上では2点だけご紹介させていただきます
↑横山大観「春乃霊峰」軸装・絹本・共箱 画寸45.8×56.6㎝
日本といえばやっぱり富士山!
数々の日本画家が題材にしていますが、大観の描く富士は別格だったと言われています。
大観の富士は世情や自身の意識などが色濃く反映され、年代とともにその姿を変えていきました。
戦争の時代には、人々を奮い立たせるような力強い富士を描き、戦後日本が落ち着きを取り戻すと、それまでの「気迫の富士」から「気品の富士」へと焦点を移行させていきます。
ここに描かれた富士は、珍しく画面の中央線上に配されています。
しっかりとした存在感をもって中央に描かれた、優しく気品あふれる富士。
大地に根を張る松と、美しく咲き誇る桜を描き添えたこの作品は、プライドを失わず復興していく日本の未来を啓示しているようでもあります。
今もこんな混乱した時代ですが、この作品を見ていると、優しく見守られる中で希望が沸いてくるようなとても素敵な作品です。
続いてご紹介するのも、大観が好んで描いた画題のひとつ、「海暾」です。
↑横山大観「海暾」額装・絹本・共箱 画寸45.8×58.2㎝
「海暾(かいとん)」とは朝陽が海上を昇るさまを指します。
砂浜を塗り残すことで逆に砂丘のボリューム感を感じさせ、そこに根を張った黒松からは風や荒れ狂う波をも制するような力強さを感じます。
砂浜を見下ろし、水平線のかなたを捉えるような目線で描かれた海がなんとも雄大!!
「日出づる国」と呼ばれた日本の美しさを、大観独特の感性で描ききった、象徴美の世界を堪能できる見事な作品です。
会場には、これら2点のほかにも見ているだけで心地よく、心が豊かになるような大観の逸品が並んでおります。
そしてもちろん大観だけではありません!!
今回ブログ上でご紹介するのはこの作品・・・
↑菱田春草「美人」軸装・絹本・菱田千代・木村武山箱 画寸115.5×50.6㎝
大観の無二の親友でもあった春草。
36歳という若さでこの世を去った春草ですが、西洋絵画の技法をいち早く取り入れるなど、伝統的な日本画の世界に次々と斬新な世界を開花させ、現代に至る日本画の要の役割を果たした重要な作家です。
春草は風景画がメインで、人物画は比較的少ない作家です。その中でも日本女性を描いているのは非常に珍しい!極々貴重な作品です。
↑橋本明治「涼」額装・絹本・共箱 画寸85.6×56.8㎝
橋本明治は美人画を描く代表的作家の一人。強いくっきりとした太い輪郭線が特徴です。
「輪郭線があるかないか」・・・ここが古来の日本画と西洋絵画の違いのひとつです。
この時代は西洋絵画の影響で、輪郭を描かない画風に変化していった時代だったので、明治も線を残すか消すか、で苦悩していました。
そんな折、「君は線を大事に絵を構築していきなさい」と諭したのは師・松岡映丘でした。
それ以来、橋本明治は日本画古来の線描を使っての日本画の近代化を目指すようになったのです。
彼の作品にはもうひとつ珍しい特徴があります。
それは、舞妓さんの顔が正面顔であること。
正面顔というのは美人画では難しく、誰もが避ける角度の顔。
そこをあえて挑戦するのが橋本明治という人でした。
↑高山辰雄「朝の稜線」額装・絹本・共シール 画寸69.4×92.0㎝
昭和の五山の一人で詩情あふれる作品で知られる高山辰雄。
この「朝の稜線」の1枚に対して、高山辰雄は下記のような文を寄せています。
『空気は清澄に 明るい光を待つ頃
それはなんとすがゝしい時か
昼間の動き 塵も今は静かに あたりの空気は
身も心も洗ってくれる様である 朝の稜線に輝く光は
新らしい深い 美しい気がある』 高山辰雄
これらの作品の他にも、下記のような作家の作品を出品しております。
近代日本画の逸品の数々を一堂にご覧いただける機会です。
ぜひご来場くださいますよう、ご案内申しあげます。
<出品作家>
横山大観、菱田春草、川合玉堂、山口蓬春、山本丘人、加山又造、橋本明治、杉山寧、
高山辰雄、安田靫彦、小倉遊亀、岩橋英遠、小林古径、奥村土牛、前田青邨、平山郁夫、
伊東深水、竹内栖鳳、福田平八郎、伊藤小坡、村上華岳、榊原紫峰、土田麦僊、上村松園、
上村松篁、山口華楊、堂本印象、菊池契月、宇田荻邨、小杉放菴、松林桂月、川端龍子、
横山 操、酒井三良
「近代日本画巨匠展」
2011年7/6(水)~7/19(火) 午前10時~午後7時30分 *最終日は午後4時閉場
松坂屋名古屋店 南館6階美術画廊 TEL052-264-3383(美術画廊)
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